研究概要 |
本研究では前駆破骨細胞融合および腫瘍細胞浸潤において極めて重要なステップである細胞骨格再構築を制御する分子の細胞内動態の解明を最終目的としている。本研究で着目しているosteopontin(OPN)は石灰化組織に分布する基質タンパクとして同定された分子であるが,Eta-1(Early T cell activation 1)と同一分子であることが明らかにされ,さらに細胞の接着および遊走に重要であり、免疫、炎症・感染性疾患,創傷治癒,腫瘍転移能獲得などに深く関与しているという報告が蓄積してきている。しかし,これらの多様な作用を説明しうる詳細なメカニズムは未知のままである。昨年度の研究から前駆破骨細胞の細胞突起伸長・遊走および扁平上皮癌細胞のwound healing過程においてOPNがsmall GTPaseなどと協調して働くことが示された。本年度は更に以下の検討を行った。 1.研究協力者であるSodek教授からOPN遺伝子欠損マウス(OPN-/-)の供与を受け,破骨細胞形成について生細胞を用いたイメージングを行った。OPN-/-および野性型マウスから得られた細胞をそれぞれ異なる蛍光分子(緑と赤)でラベルし,同数の細胞を混合後,細胞遊走・融合過程をレーザー顕微鏡下で観察した。突起伸長が見られる細胞はすべて野性型由来細胞かあるいは融合した結果,黄色の蛍光を示す細胞に限られていた。もし分泌型のOPNがこれらの反応に関与しているのであれば,野性型細胞が分泌したOPNによりOPN-/-細胞でも形態変化が起こるはずである。すなわちこの結果から細胞内OPNの関与が明確になった。 2.Cycloheximide添加により蛋白合成を阻害した場合にも細胞内に停留するOPNの存在が認められること,さらに生細胞のイメージングからこの膜近傍に停留する細胞内OPNが細胞形態変化に重要であることが示された。
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