研究概要 |
昨年度はサルあるいはラットを用いて三叉神経損傷モデル動物を作製して研究を行った。サルに関しては、覚醒状態で延髄硬膜下に各種薬物を注入する手技が確立できず、当初の目的を達成するまでにいたっていない。そこで、今回はラットの三叉神経を緩く結紮して作製したION-CCIラットに関する研究結果について報告する。ION-CCIラットの口ひげ部への機械刺激に対する逃避閾値を測定し、逃避閾値が手術前に比べ有意に低下したものを生理学実験に用いた。ION-CCIラットをpentobarbital Na(50mg/kg,ip)で麻酔し、三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)から顔面皮膚に受容野を有する単一ニューロン活動を導出した。各侵害受容ニューロンを口ひげ部への機械刺激に対する応答性から特異的侵害受容(NS)ニューロンおよび広作動閾(WDR)ニューロンに分類した。ION-CCIラットのVcから記録された侵害受容ニューロンは機械刺激および熱刺激に対する反応が有意に高く、また広い受容野を持っていた。本研究ではこれらニューロンに関して、記録部位の直下に設置したマイクロダイアリシスプローブを介して、AMPAおよびNMDA受容体拮抗薬であるMK-801、APVあるいはCNQXを微量投与し、反応性の変化を計測した。その結果、同定されたすべてのWDRニューロンにおいて、CNQX微量投与により、機械および熱刺激に対する反応性が低下した。しかし、受容野に関しては多少縮小する傾向を認めたものの有意な変化は観察されなかった。これに対し、NMDA受容体拮抗薬であるMK-801およびAPV投与はニューロン活動に対して有意な影響を与えなかった。以上の結果から、三叉神経損傷によって惹き起こされる異常疼痛にはAMPA受容体が重要な役割を担っている可能性が示された。
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