18年度は覚醒サルを用いた研究と、麻酔ラットを用いた研究を行った。当初の計画ではサルの延髄にグルタミン酸受容体拮抗薬を注入し、温度刺激弁別に対する影響および大脳皮質第一次体性感覚野ニューロン活動に対する影響を検索する予定であったが、覚醒サルの延髄にグルタミン酸受容体拮抗薬を微量注入しても、有意な影響が認められていない。おそらく、投与方法あるいは投与量の改良が必要と思われる。昨年度はN型カルシウムチャネルブッロカーを投与し、サルの温度刺激弁別速度に対する影響を調べ、顔面皮膚のカプサイシン処理により誘導される過敏化現象が有意に抑制されることをみいだした。本年度も引き続き同研究を継続し、N型カルシウムチャンネルブロッカーの投与方法について検討を加えた。その結果、我々が用いたN型カルシウムチャンネルブロッカーでは、経鼻投与よりも、経口投与において、より強い効果が得られることが明らかになった。また、経口投与でも、経鼻投与でも冷刺激に対しては有意な変化が認められなかった。これに対し、pentobarbital麻酔した三叉神経損傷モデルラットの延髄にAMPA受容体あるいはNMDA受容体拮抗薬を投与し、侵害受容ニューロン活動に対する影響を調べた結果、多くの三叉神経脊髄路核侵害受容ニューロン活動がAMPA受容体拮抗薬投与により抑制された。本実験ではAMPA受容体拮抗薬としてCNQXを用いているが、抑制作用は投与量依存性に増大した。また、投与後、生理的食塩水を投与すると、すぐに反応が回復した。本研究ではNMDA受容体拮抗薬についても検索を行ったが、有意な抑制効果は見出されなかった。このような結果から、三叉神経損傷によって顔面領域に引きおこされる異常疼痛には三叉神経脊髄路核ニューロンに存在するN型カルシウムチャネルとAMPA受容体が関与する可能性が示された。また、これまでの研究からこれら2つの受容体はお互いに機能的な関係があることが報告されており、これら受容体の関係を解明する必要があると考えられる。
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