三叉神経節内におけるニューロンとグリア細胞間クロストークの痛覚過敏に対する役割を明らかとするために、今年度は免疫組織化学法を用いて検討を行った。ラットの片側顔面皮膚/咬筋に蛍光色素(2%Fluorogold)を注入して、この部位を支配する三叉神経節(TRG)ニューロンを標識した後、この部位に起炎物質(Compllete Freund Adjuvant : CFA)を注入して炎症を誘発させた。対照群には溶媒(0.9%NaCl)を投与した。炎症群ラットではCFA投与後2日においてVon Frey hair刺激による痛覚閾値が対照ラットに比較して有意に減少し、痛覚過敏が誘導されたことが確認された。炎症誘発後、三叉神経節内のGlialfibrillary acidic protein(GFAP)免疫陽性グリア細胞で囲まれたTRGニューロン数の平均値は対照群に比較して有意に増加していた。また、炎症群のInterleukinβ(IL-1β)免疫活性はTRGニューロンとグリア細胞の両者において対照群に比較して有意な増加が確認された。一方、Fluorogoldにより蛍光標識されたTRGニューロンにおいてサイトカイン(IL-1β)受容体陽性細胞数は対照群に比較して、炎症群では有意に増加していた。 これらの結果は、三叉神経支配領域の炎症により生じる痛覚過敏の発現に炎症に起因した三叉神経節内のグリア細胞の活性化及び、そこで産生されるサイトカインの一つであるIL-1βの分泌が関与する可能性を示唆している。
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