研究概要 |
前年度、免疫組織化学法による解析より得られたデーターをもとに、今年度はIn-vivoの条件下において炎症時顔面皮膚を支配する小型TRGニューロンの興奮性がグリア細胞の活性化により分泌されるIL-1βの作用により、どのように変調を受けるか否かをマルチバレル微小電極を用いた細胞外記録法により電気生理学的に解析及び検討した。 ラットの片側顔面皮膚に起炎物質(Complete Freund's Adjuvant:CFA)を注入して炎症を誘発させた。対照群は溶媒(0.9%NaCl)を投与した。炎症群ラットはCFA投与後2日においてvon Frey hair刺激による逃避反射閾値が対照ラットに比較して有意に減少した。炎症群ラットおよび正常群のラットから顔面皮膚電気刺激に応じるAδ-TRGニューロンより、細胞外スパイクを記録した。炎症群ラットの自発放電発現率およびその最大発火率は対照群ラットに比較して有意に増加していた。炎症群ラットの自発放電頻度は、電気泳動的に投与したIL-1β受容体拮抗薬であるIL-1ra(30-90nA)により有意に減少したが、正常群ラットの自発放電発火頻度は有意な影響を与えなかった。炎症および正常対照群の自発放電発火頻度はIL-1βの電気泳動的投与により有意に増加を示した。機械刺激に応答するAδ-TRGニューロンの発火頻度は、正常群に比較して炎症群では有意に増加しその閾値低下していた。炎症により低下した機械刺激に対する閾値及びその興奮性はIL-1raの局所投与(90nA,5min)により正常レベルに回復した。 これらの結果より、In-vivoの条件下において、三叉神経支配領域の炎症により生じる痛覚過敏の発現に炎症に起因した"三叉神経節内のグリア細胞の活性"及び産生されるサイトカインの一つであるIL-1βが小型TRGニューロン興奮性増強が関与することが示唆された。
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