過去2年間の免疫組織化学的及びマルチバレルを用いた細胞外記録法による解析により得られたデーターをもとに今年度はIn-vitroの条件下において顔面皮膚を支配する小型三叉神経節(TRG)ニューロンの興奮性に関わるIL-1βの作用を穿孔パッチクランプ法を用いて電気生理学的に検討した。ラットの片側顔面皮膚に起炎物質(Complete Freund's Adjuvant: CFA)注入して炎症を誘発させた。対照群は溶媒(0.9%NaCI)を投与した。炎症群ラットはCFA投与後2日においてvon Frey hair刺激による痛覚閾値が対照ラットに比較して有意に減少した。炎症誘発部位にFluorogold(FG)を注入することによりこの部位を支配するTRGニューロンを蛍光標識した。炎症群ラットのFG標識の小型TRGニューロンのIL-1βに対する入力抵抗の低下を伴う脱分極性応答は対照群ラットより高頻度に応答した(23% vs 70%)。炎症群のTRGニューロンのIL-1βに対する脱分極性応答の閾値も、対照群より低く、IL-1β(1nM)による脱分極の大きさは有意に高い値を示した。炎症群ラットにおいては、IL-1β(10nM)び誘発される脱分極に伴いスパイ発火が誘発されるニューロンも観察された。炎症群ラットの脱分極性パルスにより誘発されたTetrodotoxin-resistanceスパイク発火頻度は正常群に比較して有意に増加しており、その闘値も低下していた。これらの小型TRGニューロンのIL-1βに対する応答はIL-1β受容体拮抗薬(IL-ra))処置により消失した。したがって、これらの結果は、炎症に起因した三叉神経節内のグリア細胞の活性化及びそこで産生されるIL-1βの分泌がTRGニューロンの興奮性を増強させ、痛覚過敏を誘発することを示唆している。
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