研究概要 |
本年度はニューロペプチドCGRPの破骨細胞形成に対する抑制作用の機序を明らかにするため、マウス骨髄培養系で観察された現象を、破甘細胞前駆細胞であるRAW264.7の細胞培養系を用いて解析している。先に、骨髄培養系においてイソプレナリンは骨吸収活性を有するTRAP陽性多核細胞形成の促進、RANKL産生の促進およびOPG産生の抑制を導き、この破骨細胞形成の促進がOPG処理により完全に抑制されることを見出している。また、CGRPはイソプレナリンによる破骨細胞形成を著しく抑制したが、RANKL産生の促進およびOPG産生の抑制には影響を及ぼさなかった。そして、CGRPはs-RANKLによる破骨細胞形成を著しく抑制した。この事より、CGRPが骨芽細胞あるいはストローマ細胞におけるRANKLおよびOPGの産生に影響することなく、破骨細胞の前駆細胞および前駆破骨細胞に対するRANKLの作用を直接抑制して、破骨細胞形成を抑制することを示している。そこで、RAW264.7細胞のs-RANKLによる破骨細胞形成に及ぼすCGRPの効果を検討し、以下の結果を得ている。(1)RAW264.7細胞にs-RANKL(100ng/ml)を一週間処理することにより骨吸収活性を有するTRAP陽性多核細胞を認めた。(2)s-RANKL(100ng/ml)によりRAW264.7細胞におけるCathepsin K, TRAP, NFAT2およびDC-STAMPmRNAに著しい発現増加を認めた。(3)RAW264.7細胞およびs-RANKL(100ng/ml)処理RAW264.7細胞において、CGRP受容体(calcitonin-receptor-likereceptor(CRLR)とreceptor-activitymodifying Protein-1(RAMP1))およびRANKのmRNA発現を認めた。(4)CGRP(10μM)はs-RANKL(100ng/ml)処理によりRAW264.7細胞にみられたTRAP陽性多核細胞の形成を抑制した。今後の課題として、破骨細胞活性を担う分子、破骨細胞分化のマスターレギュレーターのNFAT2および膜結合蛋白で細胞融合に関わるDC-STAMP発現に及ぼすCGRPの薬理学的検討に取り組んでいる。
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