研究課題
【目的】本研究は、(1)破骨細胞に発現するCl^-輸送体の分子種を同定すること、(2)既に破骨細胞で報告されているClC7型Cl^-チャネル(ClCN7)の特徴を明らかにすること、(3)常染色体優性大理石病typeIIで報告されているCLCN7の点変異で、Cl分泌能がどの様に変化するを明らかにすることより、破骨細胞骨吸収におけるCl^-輸送体の役割、特にClCN7について、構造とその機能相関を解析することを目的とした。【方法】マウス破骨細胞に発現するCl^-輸送体の発現をRT-PCR、Western blot及び免疫染色法を用いて検討した。次に、破骨細胞に発現するClCN7をPCRクローニングし、これを正常体としてADO IIに認められた点変異体を作成した。又、ヒト破骨細胞由来のcDNAライブラリー(Dr.Reddyより供与)より同様にClCN7をクローニングした。これらを組み込んだベクターをHEK293細胞にトランスフェクションした後、ClC7型Cl^-チャネルタンパク質の発現を確認すると共に、各々の点変異体のCl^-電流を正常体発現細胞と比較した。【結果と考察】本研究において、マウス破骨細胞には既に報告されているClC7型Cl^-チャネル(ClCN7)に加えてK-Cl共輸送体(KCC)1が発現し、この輸送体は骨吸収のための酸分泌輸送体として働いていることが明らかになった。次に、破骨細胞よりClCN7をクローニングして、その構造とCl-分泌能の関連について検討した。最初に正常CLCN7の性質を検討したところ、ClCN7を発現したHEK293細胞において細胞外を酸性化(pH6.5以下)にするとCl^-電流が活性化され、この電流は外向き整流性、Ca^<2+>非依存性、陰イオン透過性(Cl^->=Br^->>gluconate^-)の性質を有し、他のClC型Cl^-チャネルと異なっていた。さらに、常染色体優性骨大理石病II型(ADOII)患者で報告されている点変異体CLCN7ではCl^-分泌能が低下すること、この点変異による抑制は中でも215番目のグリシンがアルギニンに置換された点変異体(G215R)が最もCl^-分泌を低下させることが明らかになった。以上の結果から、破骨細胞に発現するClC7型Cl^-チャネルは酸性条件化で活性化され、この点変異はCl^-分泌抑制を誘発し、このことは常染色体優性大理石骨病typeIIの原因となり得ると考えられた。
すべて 2006
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Journal of Bone and Mineral Research 21巻10号
ページ: 1657-1665
Journal of Bone and Mineral Research 21巻7号
ページ: 984-992