研究概要 |
近年臨床医学での口腔機能の重要性が取り上げられる中で,唾液の分泌機構を研究することが重要になっている。とりわけ唾液分泌の維持には,上皮細胞の水輸送を駆動するCl^-輸送機能が必須であることが報告されてきた。近年申請者は,新規Ca^<2+>活性化Cl^-チャネル関連分子rCLCA-fのcDNAをクローニングし,その遺伝子発現がCa^<2+>活性化Cl^-電流を惹起することを明らかにした。ラット唾液腺では未だチャネル分子本体が明確ではないが,rCLCA-fが特異的に唾液腺導管上皮細胞に局在し,顎下腺においてCl^-再吸収に寄与する分子であると考えられた。今年度は,rCLCA-f分子の細胞内小器官膜での局在と細胞内輸送を明確にするために,TetR制御によるrCLCA-fの安定発現HEK293細胞株を利用してrCLCA-fの性質を詳細に検討した。先ず,免疫細胞染色やビオチンによる膜表面標識法により,86kDarCLCA-fタンパクの細胞膜での局在が明らかになった。また,rCLCA-fは細胞内のRab5やRab11で標識される初期,あるいはリサイクリング・エンドソームにも存在することが示され,その局在はエンドサイトーシスさせたトランスフェリン受容体の局在と一致することが明らかになった。以上より,rCLCA-fが細胞内輸送小胞に局在し,膜へのリサイクリングを受けることが示唆された。さらには,細胞外液のpHを高くすると,rCLCA-fの一部が細胞膜へ向かって移行することが観察された。以上の結果から,rCLCA-f分子を運ぶ小胞輸送の制御によって,Ca^<2+>活性化Cl^-機能が影響を受ける可能性が考えられた。これらの研究成果を基盤にして,唾液腺におけるCl^-チャネル関連タンパクのイオン輸送並びにその他の機能への関与について更に研究を進め,水輸送制御機構の解明に発展させることが必要であると考えられた。
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