研究課題
基盤研究(C)
上皮細胞のCl^-チャネルはイオン輸送,ひいては水輸送の調節によって生体の恒常性の維持に寄与している。私たちは、マウスCLCA(mCLCA)の配列に相同性の高いPCR産物をもとにして、ラット回腸からCLCA mRNAをクローニングした(rCLCA)。哺乳細胞強制発現系(HEK293細胞)において、この分子がniflumic acid感受性のCa^<2+>活性化Cl^-透過機能を有することを見出した。発現細胞のTriton X-100可溶性膜画分から120kDaと86kDaのタンパクがイムノブロヅティングによって検出された。特異的抗体を用いた免疫細胞染色やビオチンによる膜表面標識法により、86kDaタンパクの細胞膜での局在が明らかになった。さらに、N-glycosidase Fの処置による分子量のシフトの結果、一次配列から予測される分子量(100kDaと75kDa)にN型糖鎖が付加されていることが明らかになった。rCLCAタンパクの組織発現を免疫染色法によって詳細に検討した結果、顎下腺と舌下腺においては導管系上皮の細胞表面および細胞内に発現がみられた。腺房部には陽性像は検出できなかった。rCLCA抗体に陽性の約120-130kDa並びに90kDaのN型糖タンパクはTriton X-100可溶性膜画分から検出されたが、細胞質画分からは検出されなかった。rCLCA siRNAを片側の舌下乳頭の唾液腺開口部に逆行性に注入したラットにおいて、ムスカリン受容体刺激により分泌される同側顎下腺由来の唾液Cl^-濃度が対照側に比して有意に増加した。以上の結果から、rCLCAは唾液腺導管上皮細胞に発現してCl^-再吸収に関与すると考えられた。次にTetR制御によるrCLCAの安定発現HEK293細胞株を利用してrCLCAの細胞内局在を詳細に検討した。rCLCAはRab5やRab11で標識される初期、あるいはリサイクリング・エンドソームにも存在することが示され、その局在はエンドサイトーシスさせたトランスフェリン受容体の局在と一致することが明らかになった。以上より、rCLCAが細胞内輸送小胞に局在し、膜へのリサイクリングを受けることが示唆された。これらの研究成果を基盤にして、唾液腺におけるCl^-チャネル関連タンパクのイオン輸送並びにその他の機能への関与について更に研究を進め、水輸送制御機構の解明に発展させることが必要であると思われる。
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