研究概要 |
本研究では口腔癌を対象として化学療法を併用した多分割照射を行い局所制御の向上と晩期有害事象の低減の可能を明らかにすることを目的とした。1991年から2003年までに1日2回照射法で治療された口腔扁平上皮癌症例のうち、根治照射が行われた92例のうち概ね1回線量の変更なく治療を完遂できたのは56症例(1期、6例;2期、25例;3期、9例;4期、16例)で,本年度も引き続き追跡された。1回線量は期間中1.2から1.4Gyに増加された。平均総線量はそれぞれ72.4及び73.6Gyであり,平均総治療期間は47.2及び47.5日であった。局所制御は1.2及び1.4Gy群で,全例では38.7%,56.0%,1・2期では52.9%,66.7%,3・4期では21.4%,42.9%であった。1.2群に比べ1.4Gy群でより高い局所制御を示した。しかし,原病死した症例も含め1.2群で31例中13例に,1.4Gy群では25例中8例に,主として顎骨に関わる晩期有害事象を生じた。症例数あるいは生存者数に比べて発生数が多かった。不用意な抜歯、歯の脱落後の感染が主な直接的原因の場合が半数を占めたが、基本的には顎骨に対する根知的な放射線照射の影響が存在し、歯周組織の炎症性破壊が誘因となって骨破壊が進行してゆくことが推測された。今回のまとめでは,口腔癌に対する多分割照射による放射線治療では期待された局所制御を確認することはできなかった。一方で,顎骨の有害事象の発生頻度が高いことを認識する必要性のあることが明らかとなった。
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