口腔癌に対する放射線治療による局所制御成績とQOLの改善を図ることを目的に、新鮮扁平上皮癌症例92例を対象として多分割放射線治療単独もしくは化学療法を併用した多分割放射線治療を行った。このうち、1回線量を固定して治療を完遂できた症例56例を評価の対象とした。1回線量1.2Gy群では最終局所制御率は39%であり、1回線量1.4Gy群では56%であった。放射線治療前に化学療法が行われた症例の制御率は1.2Gy群では23%、1.4Gy群では100%であり、同時併用が行われた1.2Gy群6例では4例が制御された。NO症例中無病生存した症例は1.2Gy群では25例中19例、1.4Gy群では22例中17例であった。いづれの群でもN+症例はほとんど制御することはできなかった。2年以上生存が確認された39症例中21例で晩期有害事象が確認された。歯の脱落、骨露出や骨壊死、腐骨形成が生じた。局所遺残や再発症例に対する救済手術によってそれらを生じた症例が9例あった。これらは治療終了後から増加し始め、最も遅く発生した症例は6年目で生じた。 いづれの線量群でも早期例では局所制御率が約50%強、無病生存率が70-80%であったことから、手術可能例であれば手術優先の治療方針が適当であろうと思われた。一方で、進行例の場合、局所非制御となり救済手術が有効な症例もあるものの領域制御が達成されない症例が存在することから、放射線治療と手術との組み合わせ方を再考する必要や化学療法の同時併用の使用等が今後十分論議される必要のあることが伺われた。また、軽度のものも含めて放射線治療に伴う晩期有害事象の発生頻度が高いことはこの領域での多分割照射を適応する症例の選択の際に留意すべき点であるように思われた。
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