研究課題
基盤研究(C)
本研究により、口腔癌および中、下咽頭癌の原発巣腫瘍体積と頸部リンパ節転移との関係を明らかにすることができた。対象としたのは、長崎大学医学部歯学部附属病院でMRを施行した頭頸部原発の扁平上皮癌患者66症例。内訳は、口腔癌42症例(上顎12例、下顎7例、舌13例、口腔底10例)と咽頭癌24例(中咽頭15例、下咽頭9例)である。そのうち頸部リンパ節転移は26症例(口腔癌10例、咽頭癌15例)に認めた。上咽頭癌は対象に含めなかった。原発巣の腫瘍の体積の計測には造影後の脂肪抑制T1強調像を用い、造影効果の高い領域を腫瘍面積として高精細モニター上で計測し、その面積を積算することで腫瘍体積を概算した。頸部リンパ節転移の確定には切除病理標本を用いた。また転移なし症例については1年以上の経過観察を行い腫瘍体積と腫瘍径(T分類)の関係、ならびに腫瘍体積と頚部リンパ節転移の有無、転移の範囲や転移リンパ節の個数との関係について検討した。原発腫瘍の体積と従来の分類法であるT分類に明らかな相関がみられた。転移リンパ節の出現について咽頭癌では、腫瘍体積との相関を認めたものの、口腔癌では相関を認めなかった。また転移リンパ節出現の範囲や出現個数において、咽頭癌では、腫瘍体積の増大に伴って、転移の出現範囲や出現頻度が増大していたのに対し、口腔癌では明らかな関係性は認められなかった。結論として中咽頭、下咽頭癌においては腫瘍組織からのリンパの流れが多岐にわたり、原発巣の腫瘍体積増大に比例して頸部リンパ節転移の範囲や個数も増加する傾向があると考えられる。口腔癌の場合は原発腫瘍が増大することで転移リンパ節の個数は増加するものの、転移の範囲は、上頸部(頸部リンパ節レベル1-2)にとどまることが多く咽頭癌との転移の様相に違いがあると考える。こうした知見は頭頸部癌のリンパ節転移診断や治療の際に有用な情報となる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
AJNR American Journal of Neuroradiology 26・10
ページ: 2384-2389
AJNR American Journal of Neuroradiolgy. 26(9)