研究概要 |
申請者らは,これまでにMinimal Intervention Dentistryに基づいた齲蝕歯質の客観的診断法の確立をめざし,進行性齲蝕に対する色彩評価法と,修復物の二次齲蝕を引き起こす辺縁漏洩に対しての電気的評価法を開発した.本研究では,これらの評価法を停止性齲蝕も含めた齲蝕歯質の評価に応用し,齲蝕病巣の活動性に対する客観的総合診断法に発展させる.本年度は,停止性齲蝕を含めた齲蝕歯質評価に,これらの評価法を応用する際の最適な評価条件や精度について検討した. 1.電気的評価法の精度と評価対象の検討 電気的評価法の精度を,申請者らが確立した3次元辺縁漏洩解析法を応用して評価した.その結果,電気的評価法での評価結果は,窩壁表面積に対する3次元的な辺縁漏洩面積の割合と強い相関が認められた(Pearsonの相関係数:0.932).したがって,電気的評価法は,評価対象表層ではなく,評価対象内部の3次元的な状態を評価するのに適していることが示唆された. 2.色彩評価に最適な色補正用標準色見本の検討 ヒト抜去歯の画像採得を行い,健全歯質や齲蝕歯質について,市販の色補正用標準色見本を用いた色補正後のL*,a*,b*値の分布を調べた.その結果から,補正対象となる色調が,黒,白,灰色,マゼンタ,赤に偏っていることを示し,コンピュータ上で健全歯質や齲蝕歯質を模した色評価用色見本を作成した.さらに,市販の色補正用標準色見本について,L*,a*,b*の実測値と色補正前の値との関係から,画像採得による色変化の状態を調べ,その変化をコンピュータ上で再現した.以上の結果を用いたコンピュータシミュレーションにより,停止性齲蝕も含めた齲蝕歯質の評価に最適な色補正用標準色見本の色構成を鋭意検討している.今後,本実験で得られた最適な色補正用標準色見本を用いて,停止性齲蝕を含めた齲蝕歯質の評価を行う予定である.
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