研究分担者 |
高柴 正悟 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50226768)
西村 英紀 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80208222)
成石 浩司 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00346446)
谷本 一郎 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00280686)
前田 博史 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00274001)
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研究概要 |
象牙質・歯髄複合体の形成は歯髄の抗炎症反応において非常に重要である。我々は,ラット創傷歯髄から単離した新規遺伝子FIP-2の発現動態とアポトーシスへの影響を調べた。 ラットゲノムライブラリーを用いてクローニングしたFIP-2A/B cDNAの5'上流のDNA断片と,FIP-2A/B cDNAを含む発現ベクターをラット腎臓細胞に遺伝子導入・選択培養し,FIP-2A/Bの細胞内局在および発現量を免疫染色法にて調べた。FIP-2Aは核内および細胞質に均一に発現する一方で,FIP-2Bは細胞質のゴルジ小体に局在することが分かった。また,FIP-2B発現細胞ではアクチンフィラメントの減少が確認できた。すなわち,FIP-2Bの細胞生物学的な機能は,ゴルジ小体での蛋白輸送と細胞骨格の再構成に関与する可能性がある。 次に,創傷歯髄で強く発現するFIP-2Bに着目して,ラット歯髄線維芽細胞での発現動態を調べた。FIP-2BがTumor necrosis factor(TNF)-αにより誘導されること,さらにTNF-αにより活性化するパスウェイに対する薬理的阻害剤の併用により,FIP-2Bの増加がc-jun N-terminal kinase依存的であることをウエスタンブロットにて明らかにした。また,過酸化水素による細胞死誘導刺激でFIP-2Bが核内移行することを免疫染色法にて確認した。この時,ウエスタンブロットにおいて,翻訳後修飾を示唆するFIP-2Bのバンドのシフトが確認された。すなわち,歯髄炎症の過程で,FIP-2Bはリン酸化などの修飾を受け核内に移行し,細胞死制御因子の転写を促進的に調節している可能性がある。 以上の結果から,FIP-2Bは生理的条件下では蛋白輸送と細胞骨格に関与する一方で,歯髄炎症時のFIP-2Bの発現増加に伴う細胞死制御因子の促進により,炎症反応が増悪することが示唆された。
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