研究概要 |
Er : YAGレーザー照射(アーウィンアドベール/モリタ、60mJ/pulse)された正常象牙質において、本出力下では当該表層に構造欠陥や熱変性層が生じ、レジンの接着性は阻害され、いわゆる「レーザーエッチング」による接着促進効果は認められないが、高出力照射(250mJ/pulse)ではレーザーの影響は表層に限局され,レジンの接着強さは低下しないことを平成17年度は明らかにした。そこで本年度は、レーザーの照射条件を低出力、中出力、高出力(60mj/pulse,1pps、150mj/pulse,1pps、250mj/pulse,1pps)に細分化し,その表層の超微細構造と当該面におけるレジンの接着性について比較検討した。 低出力照射象牙質表層では,外形不明瞭で横紋構造が消失し変性したコラーゲン線維を有する無定形の一層が3〜4μm観察された。中出力および高出力照射象頒表層においては,両者間に差異はほとんど認められず,このような無定形な層はほとんど生成されず正常象牙質と識別困難であった。しかし,照射表面にはコラーゲン線維が引きちぎられた様な像が散見された。また,接着試験において,低出力照射ではレジンの接着性は有意に低下したが,中出力ならびに高出力照射では,ほとんど低下しなかった。したがって、照射エネルギーが小さいとレーザーの影響を被った象牙質は蒸散しきれず表層に多くに留まり易いことが推察され,その結果レジンの接着性も低下したものと考えられた。しかし,中〜高出力照射は臨床的には痛みを伴うため象牙質切削には使用出来ない。したがって,低出力照射でう蝕を除去した後,中〜高出力照射で変性層を除去するなど対策を講じる必要があろう。 このような成果を踏まえ,来年度は,レーザーの影響を被った一層を除去する方策の検討,ならびにレーザー専用の象牙質接着システムの開発に発展させたいと考えている。
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