研究概要 |
1/2のラウンドバーにて、生後5週齢のSDラット第一臼歯の咬合面を穿孔露髄させ、その後開放のまま放置することで実験的根尖性歯周炎を惹起させた。無処置の対照群、露髄後3,6週経過群のラットをPLP固定液にて環流固定後、試料を摘出しEDTA溶液にて脱灰後通法に従い凍結切片を作成した。H・E染色ならびに一次抗体としてnerve growth factorのレセプターであるTrkAに対する抗体、神経線維を観察するためにPGP9.5、マクロファージ系の細胞を同定するためにED1を用いた免疫染色を行った。無処置の対照群では、マラッセの遺残上皮は根尖部歯根膜組織中には観察されなかったが、分岐部歯根膜中ではセメント質近傍に小塊状を呈して散在性に認められ、TrkAに陽性を示していた。ED1陽性で樹枝状を呈する細胞が歯根膜中に散見されたが、小円形細胞の浸潤は観察されなかった。PGP9.5陽性の神経線維は歯槽骨から歯髄内および歯根膜中に伸長していたが、顕著な分岐はみられなかった。露髄群では、分岐部髄管ならびに根尖孔を中心として著明な好中球の浸潤がみられ、周囲歯根膜中にはED1陽性で類円形を呈するマクロファージの浸潤が観察されると同時に歯槽骨の一部ではED1に陽性を示す多核の破骨細胞も観察された。加えて、処置後6週経過例では歯槽骨近傍に形質細胞やリンパ球の浸潤も認められた。また、PGP9.5陽性の神経線維は炎症部位を囲繞するように走行しており、発芽により神経線維の密度は明らかに上昇していた。これらの炎症性細胞浸潤や神経線維の発芽は、3週経過例に比べて6週経過例で、また分岐部歯根膜に比べて根尖部歯根膜において顕著であった。一方、対照群に比べて分岐部歯根膜中のマラッセの遺残上皮は個々の細胞が膨化すると共に大きな集塊を形成していたが、これらの細胞はTrkAに対して陰性を示した。これらのことから、マラッセの遺残上皮の増殖に炎症反応は関与しているが、神経線維との直接的な関連はないことが示唆された。
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