研究概要 |
私たちは,歯髄の生死を決定付ける因子としてVR-1とPAR-2について検討した.その結果,VR-1は歯髄細胞のアポトーシスを誘導することを前年度の報告に記載している(論文投稿準備中).そこで,今年度は,歯髄細胞の炎症反応性の方向としてPAR-2の機能分析を行った.PAR-2は歯髄細胞にRNA,タンパクレベル両方において発現していること,および炎症性因子であるIL-6およびTNF-aの発現に関与していることを確認している.また,その転写因子についても現在分析中である.そこで,今回はPAR-2を介する神経ペプチドであるサブスタンスPの歯髄細胞における炎症反応に対する関与について以下の結果を得たので報告する. 1)サブスタンスPは,歯髄細胞に対してIl-6産生を濃度依存的に誘導していた.その作用時間は刺激後24時間から48時間で上昇していた. 2)サブスタンスPによるIL-6産生誘導は,ERK MAPキナーゼとp38 MAPキナーゼに対する特異的阻害剤で抑制されたが,JNKに対する特異的阻害剤では阻害されなかった. 3)サブスタンスPによるIL-6産生誘導は,転写因子AP-1とSp-1に対するsiRNAをトランスフェクションした細胞において抑制された. 以上より,サブスタンスPで誘導される炎症性ファクターIL-6の産生誘導は,ERKおよびp38 MAPキナーゼと転写因子Ap-1およびSp-1を介することがわかった. 現在,この結果を踏まえてサブスタンスPの誘導に関与するPAR-2の役割を分析中である,今のところ,MAPキナーゼや転写因子に関して両者のスイッチとなるファクターの同定はできていない.今後,VR-1とPAR-2に関与するシグナルに関与するMAPキナーゼや転写因子の詳細を検討し,歯髄の生死に炎症反応がどう関わるかを追求する予定である.
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