研究概要 |
本研究では、口腔内好中球の活性化および細胞死の様態を評価することを目的とした。 口腔を含嗽して回収した細胞から高純度に好中球を分離する方法を確立し、調整した口腔内好中球の活性酸素産生能および細胞内グルタチオン濃度を測定した。無刺激下の口腔内好中球は、末梢血好中球に比較して有意に高い活性酸素産生能を示し、細胞内グルタチオン濃度は低下していた。一方、末梢血好中球をPMAあるいはZymosanで刺激すると細胞内グルタチオン濃度が口腔内好中球のそれと同等に低下した。以上の結果から、口腔内好中球はすでに活性化されて活性酸素を産生しており、細胞の抗酸化物質であるグルタチオン量が低下していると解釈された。 口腔内好中球のアポトーシスの様態を、PIおよびannexin V染色によりflow cytometry解析した。調整直後の好中球は、早期アポトーシスに陥った細胞は5%未満であったが、2時間培養後には、80%以上が後期アポトーシスあるいはネクローシスの状態にあり、非常に急速に細胞死に至ることがわかった。また、調整後の細胞のミトコンドリア膜内外電位差が低下していることから、口腔内好中球にはすでにアポトーシスが誘導されていることが強く示唆された。口腔内好中球のアポトーシスの遅延効果を、抗酸化剤(NAC,グルタチオン、coenzyme Q_<10>、エピガロカテキン、ビタミン類、mannitol, SOD, catalase)、カスパーゼ阻害剤、p38 MAP kinase阻害剤間で比較・検討した。NAC,グルタチオン、coenzyme Q_<10>は好中球の細胞死を有意に遅延した。一方、caspase inhibitorsおよびp38 MAP kinase阻害剤は遅延しなかった。口腔内好中球のカスパーゼ3,8,9はともに低下していた。アポトーシス関連分子群の発現様態をWestern blotting法で解析した。口腔内好中球は、末梢血好中球に比較して、同程度のBaxを発現し、Badおよびcytochrome cの発現は高かった。一方、リン酸化Badの発現は低下していた。以上の結果より、口腔内好中球には、カスパーゼ非依存的細胞死の機序が関わると考えられる。
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