歯髄の硬組織形成と炎症には密接な関わりがあるとも考えられており、歯髄における炎症の程度がその硬組織形成を促す重要な要素であると考えられている。ヒト歯髄細胞においてもBMP-2を添加することによりALP活性を亢進させ、象牙芽細胞への分化を促進するとの報告もあることから、BMP-2はヒト歯髄においても硬組織形成を促進させるものと考えられる。BMPはレセプターに結合した際、特異型smadであるsmad 1、5、8のそれぞれが共有型smadであるsmad 4と特異型smadのいずれかが複合体を形成し、核内へと移行することによりシグナル伝達を行う。抑制型smadであるsmad 7は特異型smadのレセプターによるリン酸化に競合したり、特異型smadに結合することによって特異型smadと共有型smadの複合体形成を阻害することによってその作用を抑制する。抑制型Smadは炎症性サイトカインの転写因子であるNF-κBによって発現調節されており、炎症と硬組織形成にかかわりがあると考える。TNF-αを作用させた歯髄細胞においてBMP-2 mRNA量の増加が明確に認め、またTNF-αを歯髄培養細胞に添加した際には、ALP活性の亢進は認められなかったが、NF-κBの阻害剤であるPDTCとTNF-αを共に作用させた郡においてTNF-αを単独で作用させた郡と比較して有意にALP活性の亢進が認められた。またRT-PCR法およびwestern blot法の結果において、PDTCとTNF-αを共に作用させることにより、TNF-αを単独で刺激したものと比較してsmad 7 mRNA量およびタンパク質量の低下が認められた。これらの結果から、BMPのシグナル伝達は炎症性サイトカインのNF-κBを介して発現される抑制型Smadによって調節されているものと推測される。
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