平成17年度は、エナメル質表面から行ういわゆる生活歯の漂白法によって、エナメル質および直下の象牙質がどのように漂白されるかについてまず調べた。完全埋伏であったヒト新鮮抜去第三大臼歯を用い、エナメル質の外から漂白を行い切断し、その効果を表層エナメル質から象牙質内装まで微小面分光色差計で測定した。その結果、エナメル質では漂白を行わなかった対照側と比較して、漂白を行った側では統計学的有意差をもって白さが増す傾向にあり、象牙質表層においても同じような傾向が認められた。この結果は、他の研究者の報告とも一致する、しかし、象牙質の中層、深層では漂白効果は認められなかった。これらのことから、漂白剤はエナメル質を通過し一部象牙質にも達することが分かった。新鮮抜去歯でも漂白剤はエナメル質を通過することが認められたが、漂白の効果はほとんどエナメル質に限局しており漂白される主体はエナメル質であることもわかった。この研究成果は(日本歯科保存学会雑誌第48巻第6号 P986〜994 表題 変色歯漂白剤のヒトエナメル質と象牙質に対する漂白効果)において掲載されている。今後、医院で行うOFFICE BLEACHINGと家庭で行うHOME BLEACHINGの漂白効果の違いについて、両者の漂白剤の歯質浸透度を測定することによって色調の違いなどを明らかにし、次いで、漂白される対象が主にエナメル室内の有機質であるという仮説に従い、エナメル質に分布する有機質の様相を精査し、漂白の機序を明らかにしていく予定である。
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