研究概要 |
本研究では,無拘束の超小型コードレスブラキシズム解析システムを開発し,平常の睡眠状態での夜間睡眠時の筋活動の正確な測定を実現することにより夜間ブラキシズムの抑制効果の観点からスプリント療法の有効性を検討することとした. 1.新システムの概要 ブラキシズム計測システムBMS-601(原田電子工業株式会社製)は,電極,増幅アンプなどを一体化した超小型送信ユニットおよび受信ユニットからなる.増幅アンプは500倍であり,周波数特性10〜500Hz,分解能8bit,サンプリング周波数1kHzのデジタル信号で無線送信されCFカードメモリに記録される. 2.測定精度の検証 日中覚醒時におけるBMS-601と従来のポリグラフシステムの筋電図波形を比較した結果,1)BMS-601の波形はポリグラフの波形と同様に明瞭であり活動状態を十分認識できた.また,最大咬みしめ時のRMS値を測定したところ両システム間に高い相関が見られた.2)送受信ユニット間距離100cm以下では問題なく受信可能であった.3)睡眠時の姿勢による筋電図波形への影響は少なく,寝返り運動時のモーションアーチファクトも従来のポリグラフと同等かより小さいものであった. 3.顎関節症患者および歯ぎしり患者の睡眠時筋活動の測定 自宅における夜間睡眠中の筋活動の測定を行うことが可能となったため,複数日の連続測定が可能となり,患者群を対象としたスプリント使用時と非使用時の比較が行い易くなった,しかし,睡眠時のスパイク状ノイズ除去のために受信アンテナ構造改変等に予定外の期間を要したため,最終的にノイズレスでスプリント使用時と非使用時の測定の比較を行えた被験者数は僅かであった,被験者の中にはスプリントの使用時は大幅な夜間筋活動の減少を示したものもあったが,明らかな変化を認めないものもあった.この点については,ブラキシズムの発現メカニズムの個人差の影響の可能性も考えられるが,今後さらに被験者を増やす必要性が示された.
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