研究概要 |
これまでに行ってきた天然歯や現在咬合面に用いられる代表的な数種の修復材料を用いた対合歯との直接的な接触による摩耗を想定した滑走摩耗試験により,天然歯や材料相互の摩耗傾向は,その組み合わせにより大きく異なることが明らかになり,摩耗性は単に材料固有の性質だけではなく,対合した材料によって大きな影響を受けると考えられた.本研究の目的は,この摩耗傾向の違いに影響を与える因子を明らかにすることであり,やはり材料固有の性質ではなく対合した材料により大きな影響を受ける因子である材料間の摩擦係数に着目した.今年度は各材料間の摩擦係数の測定を行い,これまでに行ってきた摩耗試験の結果と比較・検討した. 実験には現在歯冠修復物咬合面に応用される代表的な材料である12%金銀パラジウム合金,白金加金,陶材焼付用合金,ポーセレン,硬質レジンの5種類とヒト天然歯エナメル質を用いた.それぞれの材料で,摩耗試験に用いた形状である先端が半球状の棒状試料と平板状試料を作製し,各材料を組み合わせ,平板状試料上に棒状試料を滑走運動させた際の摩擦力を測定した.測定には,試作した冶具を材料試験機(島津オートグラフAG-IS)に取り付けた摩擦力測定装置を用い,試験荷重は滑走摩耗試験時と同様に500Nとし,試験速度5mm/sec,試験距離5mmの条件で行った. 同材料同士を含めた6種類の材料間の摩擦力(摩擦係数)はそれぞれ異なっていた.しかしながら,滑走摩耗試験における各材料間の摩耗量との間には明らかな相関は認められず,今回の実験条件においては材料間の摩擦力が摩耗傾向に与える影響は明らかにならなかった.今後は,試験装置,試験条件等を再検討した後に,再度摩擦力の測定を行う予定である.
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