研究概要 |
健常者での嚥下活動と音声言語活動での鼻咽腔閉鎖機能の調節様相の相違と関係を,口蓋帆挙筋活動を指標にして食物物性の相違と舌-軟口蓋運動を検討した. 物性の相違する試験食品として,ニュートン性を有する水とミルクを用いた.各々の試験食ごとの個人至適嚥下量を調べておき,平均至適嚥下量を個人ごとに算出し,それに基づいて試験食を10回嚥下させた,被験者10人を対象に調べた結果,全員において同量を嚥下しているにもかかわらず,ミルクでの嚥下時の口蓋帆挙筋活動量は,水での活動量よりも有意に小さかった. 意義:今向の結果は,嚥下時の軟口蓋運動は,口腔に保持した食物の物性にもとづいて調節されることを示している.すなわち,嚥下時の口蓋帆挙筋活動は,speechでの活動と同様に,食物物性を指標に学習性に調節されることを示唆し,さらにこのことは,軟口蓋運動が,これまでの教科書や成書にあるようなon-offのbinary運動ではないことを示し,さらに既に学習した食物物性に照らし合わせて調節されていることを示している. 重要性:本結果は,現在のX線ビデオや内視鏡検査における軟口蓋運動の評価基準に新たな見解を投じており,また嚥下リハビリテーションや嚥下食の開発に軟口蓋運動と食物物性の関連性を考慮する必要性を提示している.
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