研究概要 |
近年,大脳生理学などの分野では人間の脳機能を可視化できるfunctional MRI(以後,fMRI)が注目されている.1990年にはBOLD効果に基づくfMRIによる人間の脳機能イメージングが開発され,現在はヒト脳の機能マッピングまで研究され,高次脳機能研究分野ではスタンダードな手法になりつつある. 一方,医療や介護領域では摂食・嚥下リハビリテーションへの関心が高く,口腔内外の感覚刺激や運動訓練が行われるが,これらの有効性を示す実証報告はない.また,歯科学領域では「咀嚼運動は脳を賦活させる」と言われるが,その客観的根拠はない.「咀嚼して嚥下する」という本来の摂食機能がもつ意義を,高次脳の観察を行うことにより明らかにしていくことが本研究の最終目的である。 17年度当初は本施設(九州大学病院)ではMRIは撮影可能な環境にあったが,年度半ばからは新病棟への移転準備のため研究用撮影がスケジュール上厳しくなったため,今年度はおもに以下の研究を行った. 研究代表者の松山はタスク選定のために,予定12種類の運動(舌運動,タッピング運動など)を仰臥位で行わせた時の頭部動揺を調査した.その結果,連続発音や反復唾液嚥下運動,咀嚼運動(後半)は動揺が小さいが,大開閉口運動や咀嚼運動(前半)では大きく,これらをタスクとするためには頭部固定装置が必要であることがわかった.今後,イヤー・ロッド型とヘッドレスト型の2つの固定装置を独自に製作,比較検討する必要性が生じた. また,研究分担者の後藤(歯科放射線学)はfMRIの解析について,同じく研究分担者の中村(MR撮影技術学)や研究協力者の滝沢(画像開発学)と画像撮影や解析法構築の技術的準備を行った.
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