研究概要 |
Candida albicans死菌体懸濁液をウサギの口蓋扁桃への投与を繰返すと、C.albicans唾液抗体が誘導され,この抗体は、細胞培養系でC.albicansによるヒト歯肉上皮細胞への付着を阻害する能力を有する。したがって、唾液抗体を誘導させると、口腔内でのC.albicans感染を抑制すると期待される。そこで,ウサギでの実験的C.albicans口腔内感染系を作成し口腔接種におよぼす唾液C.albicans抗体の影響を検索した。 日和見感染病原体のC.albicansによる実験的感染系には,従来は免疫抑制剤が使用されていた。しかし,粘膜免疫による影響を検索する本研究課題では免疫抑制剤が使用できない。そのため,免疫抑制剤を用いない方法で,口腔内感染系の新規作成を目指した。第1に,クロルプロマジンにより舌や顎の運動を抑制させ,綿球に含ませたC.albicans生菌を口腔内に1回投与する方法を検討した。第2として,特定の薬剤を用いることなく,高密度のC.albicans生菌懸濁液を口腔内に数回投与する方法を検討した。両方法においてもC.albicans感染による口腔粘膜への白斑形成には至らなかった。しかし,後者の方法では,口腔粘膜swab試料および糞便から4週間前後にわたりC.albicansの生菌が検出された。この結果当初の目的であった,免疫抑制剤を用いない方法での実験的C.albicans口腔内感染系を作成することに成功した。しかし,残念ながら現在までのところC.albicansの口腔粘膜swabおよび糞便からの排除に粘膜免疫誘導と非誘導ウサギとの間で有意な違いは確認されていない。
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