研究概要 |
ビスフェノールA(BPA)誘導体やフタル酸エステルは歯科用材料の一成分として使用されている。CYP1A1やCYP1A2、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A7は発癌性前駆物質の代謝活性化に関与していると考えられている酵素である。歯科用材料の成分がこれらの酵素とどのように関わっているかほとんどわかっていない。そこで遺伝子導入細胞を用いてビスフェノールA(BPA)誘導体やフタル酸エステル等の細胞毒性発現の解明と代謝活性化酵素の誘導メカニズムを解明することを目的として以下の実験を行った。 鎌滝らによって樹立された遺伝子導入細胞(CR-119細胞とA2R-5細胞、ER-18細胞3A4-10細胞、3A7-40細胞)を用いて歯科用レジンモノマーの代謝活性化や細胞毒性についてコロニー形成法を用いて実験を行った.そして次の結論を得た.チトクロームP450の分子種であるCYP1A2とCYP2E1は歯科用レジンモノマーのUDMA, TEGDMA, DMAEM, EDGMA, Bis-GMAを代謝活性化しない.さらにCYP3A4,cYP3A7はBPAやBis-GMAを代謝活性化しないことが判明した。 また肝臓癌の細胞であるHepG2細胞を用いてレポータージーンアッセイとノーザンブロット分析の結果からCYP1A1の誘導能は弱いが,BPAとBis-GMA、BHPはCYP1A1を誘導し、BADGEは誘導を抑制することが示唆された。さらにフタル酸エステル類(DEHPとDBP、BBP、DEP)は全くCYP1A1を誘導しなかった。したがってBPA誘導体とフタル酸エステル類は細胞内のCYP1A1を誘導するための受容体に対する反応が違うのではないかと推測される。
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