研究概要 |
歯冠補綴物に対する審美性の要求から,CAD/CAM歯科用セラミックを用いて製作した,オールセラミッククラウンに対する期待が増加している.CAD/CAM用セラミックスであるリューサイト強化型シリケートガラス(ProCAD, Ivoclar Vivadent)に対して,各種表面改質と表面処理を施し,レジンセメント(Rely X, 3MESPE)でチタン円板を接着させた後,せん断接着強さの測定を行い接着性の変化を評価した.表面改質処理として,サンドブラスト処理とトライボケミカル処理,表面処理としてシランカップリング処理と機能性モノマー処理,さらに両表面処理を施す複合表面処理についても実験を行った. ProCADに対するブラスト処理は,表面をわずかに粗造化させ,嵌合力の増加と表面の活性化により接着強さを向上させることが可能であった.ProCADに対するシランカップリング剤の接着強さは未表面処理よりも顕著に高く,特にトライボケミカル面に対するシランカップリング処理の表面処理効果は大きいことが認められた.ProCADに対する機能性モノマーの表面処理効果はシランカップリング剤よりも大きくはなかったが,シランカップリング処理と組み合わせることによりそれぞれ単独で用いるよりも接着強さを顕著に向上させることが可能であった.さらに,トライボケミカル処理による表面改質面における複合表面処理条件では,今回最高の52MPaの接着強さを示し,トライボケミカル処理だけの条件より2倍,未表面改質面に対しては3倍以上の接着強さとなり,組成が複雑なCAD/CAM用セラミックスに対して,複合表面処理法は接着性を向上させる有効な方法であることが認められた.
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