研究概要 |
本研究では,3次元スキャホールドとしてチタンファイバーメッシュに着目した.まず,分子プレカーサー法を用いてチタンファイバーメッシュへの炭酸含有アパタイト薄膜コーティングについて検討した.分子プレカーサー溶液はEDTA-Ca錯体のアルコール溶液とメタリン酸ジブチルアンモニウム塩をCa/P=1.67の割合で調整して作製した.EDTA-Ca錯体は通常アルコールに溶解しないのであるが,ジブチルアミンを加えることによってアルコール可溶性となり,製膜性も向上する.チタンファイバーメッシュは気効率82%,直径15mm,厚さ3.0mmのディスク状の物を用いた. チタンファイバーメッシュを分子プレカーサー溶液に5分間浸漬し,その後,60℃で20分間,600℃で2時間加熱処理を行なった.チタンファイバーメッシュ内部での炭酸含有アパタイト薄膜の形成状態の確認をX線光電子分光(XPS)法にて確認した.その結果,1回処理ではチタンファイーバーメッシュの表面にはCa原子,P原子の存在が確認され,炭酸含有アパタイト薄膜が形成されていたが,ファイバーメッシュ内部ではCa原子,P原子の存在はほとんど確認されず,薄膜の形成は不十分であった.これは,プレカーサー溶液のファイバーメッシュ内部への浸透が不十分であったためと思われる.そこで,溶液の浸透性を高めるために,溶液浸漬と加熱処理を3回繰り返す3回処理を行なった.その結果,チタンファイバーメッシュ内部までCa原子,P原子の存在が確認され,効率よく炭酸含有アパタイト薄膜が形成されたことが判明した. 以上,分子プレカーサー法を用いて,3次元スキャホールドとして有望なチタンファイバーメッシュの内部にまで炭酸含有アパタイト薄膜コーティングを施すことができた.
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