研究概要 |
1.リン酸による表面処理を用いたレジン系装着材料(Valiolink II, Rely X ARC)の,仮着後(HY-Bond Temporary Cement Hard:以下HYB, Freegenol Temporary Pack:以下FTPおよびNeodyne T:以下NDTの3仮着材と付随する前処理を行う)の象牙質に対するセラミック試料(IPS Empress)を接着した後(37℃で24時間精製水中保管)の勇断接着強度を測定した。その結果、Valiolink IIの接着強さはコントロール、HYB、FTPおよびNDTの順に低くなり、NDT(5.9MPa)は有意に低い値(P<0.05)を示した。Rely X ARCの接着強さは、コントロール(21.7MPa)、HYB(11.3MPa)、FTP(6.0MPa)およびNDT(11.2MPa)となり、コントロールと比較してすべてで有意に低かった。Valiolink IIとRely X ARCでは、接着強さが低下した条件(仮着材ならびにその付随する前処理)がそれぞれ異なることから、リン酸処理を行うレジン系装着材料の接着強さは適用する仮着材との組み合わせによって影響が異なることが判明し、実際の使用にあたって注意しなければならないことが示唆された。 2.間接修復用コンポジットレジンによる歯冠修復・追加補修処置の最適な接着技法を求めるため、エステニアに対する各種シラン処理が接着強さに及ぼす影響を調べた。その結果、シラン処理により有意に接着強さが向上したが処理剤の種類によって接着強さが大きく異なっており、最も高い値を示したのは機能性モノマーとしてリン酸エステル系をもつ2液タイプの処理剤であった。したがって、シラン処理剤の選択は歯冠修復・追加補修処置を行う際に適切なシラン処理システムを選択しなければならないという臨床上の示唆が得られた。 3.今後の研究計画として、レジン材料で支台築造を行った支台歯面に、仮着処理や前処理を行った後の接着強さに関して、今年度と同様にレジン系装着材料の適切な適用や組み合わせを究明する予定である。
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