研究概要 |
再生医療用scaffoldへの応用を目的として,カーボンナノチューブとアルギン酸からなるナノコンポジットゲルを調製し,その基本物性と,細胞毒性および組織適合性を評価した.調製したナノコンポジットゲルはカーボンナノチューブの導入によってゲル化時間が短縮し,加圧圧縮試験による物性評価でも未導入のゲルに比べて,物性の向上が顕著であった.また,カーボンナノチューブ/アルギン酸ナノコンポジットゲルを凍結乾燥すると,連続性のある細孔が豊富な特徴的な構造が形成されており,細胞の定着に有効な組織構造であることが確認された.こうして調製したナノコンポジットゲルは骨芽細胞に対して細胞毒性を示さず,ラット皮下への埋入試験の結果からも組織への為害性は認められなかった.これらの知見から,カーボンナノチューブ/アルギン酸ナノコンポジットゲルは再生医療用scaffold材料としてきわめて有用な素材であることが明らかとなった.本ゲルに導入したカーボンナノチューブは表層をカルボキシル化して水溶性に改質したものであり,このカルボキシル基を介して各種のタンパクや薬剤を担持できることから,scaffoldのみならず,DDSとしての発展も期待できることが示唆された.
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