研究概要 |
低頻度の電気刺激を家兎の三叉神経に加えると,交感神経活動の減少により平均動脈圧の低下が生じるが,臓器によってその際の血流量の減少の程度が異なる可能性がある.そこで.本年度は総頸動脈(CA),腎動脈(RA),大腿動脈(FA)の血流量の変化を検討した. 実験には体重約2.5kgの日本白色種雄性家兎を用いた.ウレタン,α-クロラロース,ガラミンを投与し,気管切開した後,酸素・空気(吸入酸素濃度30%)による人工呼吸下にて実験を行った.オトガイ神経に電気刺激を加え血圧を低下させ,その際の血流量の変化をCA, RA, FAで検討した.オトガイ神経電気刺激は電気刺激装置ならびにアイソレータを用い白金製双極電極にて行い,強度5Vから25V,頻度5Hz,持続時間0.5msの矩形波で10sの刺激を加えた.血流量の測定は,それぞれの動脈に直接ブローベを装着し,パルスドップラ血流計で行った.動脈圧は大腿動脈にカニュレーションし測定した. 血流量は2動脈ずつ比較した.CAとRAとの検討では,平均動脈圧は三叉神経電気刺激により対照値の66.4%に低下し,CA血流量は刺激により対照値の70.2%,RA血流量は64.2%に低下した.CAとFAとの比較では,平均動脈圧は三叉神経電気刺激により対照値の75.7%に低下し,CA血流量は刺激により対照値の81.7%,FA血流量は75.6%に低下した.RAとFAとの比較では,平均動脈圧は三叉神経電気刺激により対照値の51.2%に低下し,RA血流量は刺激により対照値の56.1%,FA血流量は48.2%に低下した.以上の結果より,三叉神経刺激により生じる血流量の減少は,FA, RA, CAの順に大きい傾向があることが示され,部位により交感神経活動の減少の程度や血流の自己調節能に違いがあると考えられた.
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