研究概要 |
口腔悪性腫瘍の局所進展例に対し,治療成績を高めるために手術前に放射線ならびに化学療法を併用してから手術を行ってきた.われわれの施設では,化学療法と放射線治療を同時に施行することにより,過半数の患者の手術摘出標本で,病理組織学的に腫瘍細胞が見出されないという結果を得ている.しかし,現在の診断技術では手術前に行われる放射線治療ならびに化学療法に対する感受性の予測は不可能である.近年,遺伝子工学的手法の発達により,腫瘍組織の生物学的背景をとらえることが比較的容易に可能となっている. 本研究では,生検材料を用いて,腫瘍組織の分子生物学的に検討により口腔悪性腫瘍に対する術前の化学療法併用放射線治療の効果予測因子を明らかにすることを目的とする.現在までの本研究対象症例数は,放射線単独治療群15例,化学療法併用放射線治療群は20例で,計35例である. 1.治療成績 病理組織学的に有効と判断されたのは,放射線単独治療群では26%に対し,化学療法併用放射線治療群65%であった.5年生存率は,放射線単独治療群では約40%,化学療法併用放射線治療群では95%と有意に改善していた. 2.免疫組織学的検討 化学療法併用放射線治療群において,生検材料を用いて癌抑制遺伝子,p53ならびにp53依存性リボ核酸還元酵素遺伝子,p53R2の発現を免疫組織学的に検討した.p53陽性率は80%,p53陽性率は73.3%であった.p53陽性・陰性,p53R2陽性・陰性を組み合わせ,4パターンで統計学的に治療効果を予測する組み合わせは明らかではなかった.
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