口腔癌において、顎下または頚部リンパ節への転移の頻度は非常に高く、予後に大きく関与する。リンパ節へのホーミングに関わる因子として、ケモカイン・ケモカインレセプター系が知られているが、今回申請者はケモカインレセプターと同様に7回膜貫通型Gタンパク共役型の構造をもつドーパミンレセプターD3がナイーブCD8陽性T細胞に選択的に発現し、ナイーブCD8陽性T細胞の遊走とリンパ節へのホーミングに関与していることを見出した。今研究期間において申請者は、D3が遺伝子レベルおよびタンパクレベルでナイーブCD8陽性T細胞に発現していること、ドーパミンによる遊走反応および接若反応を誘導すること、ナイーブCD8陽性T細胞の主要な遊走因子であるケモカインCCL19、CCL21、CXCL12との共存下においてドーパミンは相乗的な遊走反応を誘導することを示した。また、D3特異的阻害剤を腹腔内に投与したマウスにおいて、蛍光標識したナイーブCD8陽性T細胞のリンパ節中での特異的な数の減少を認めた。以上の結果から、二次リンパ組織へのナイーブCD8陽性T細胞のホーミングは、D3がナイーブCD8陽性T細胞に選択的に発現しており、ドーパミンはD3を介してインテグリンの活性化、および細胞遊走を誘導することが明らかとなった。さらにマウスへのT細胞の移入実験において、D3特異的阻害剤がナイーブCD8陽性T細胞のリンパ節内での数を選択的に減少することから、ホーミングを部分的に阻害することが明らかとなった。結論として、ドーパミンはケモカインと協調して二次リンパ組織へのナイーブCD8陽性T細胞のホーミングに関与することが示唆された。口腔癌のリンパ節への転移時にもケモカインーケモカインレセプター系だけでなく、D3など他の7回膜貫通型Gタンパク共役型レセプターの関与が考えられ、現在口腔癌組織を用いて研究をすすめている
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