研究課題
歯牙は、上皮間葉相互作用により形成され、その分子機構について解析が進められ複雑な分子ネットワークが明らかにされてきた。一方、爬虫類以下は多生歯性であるのに対し、ヒトでは、大臼歯が一生歯性以外は二生歯性で、歯数は厳密に制御されているが、その分子メカニズムは明らかでない。近年、歯数が増加する過剰発現マウス(LEF1,EDA, EDA-R)や遺伝性に過剰歯を起こす遺伝子変異(Runx2)など、1つの遺伝子の発現量、遺伝子変異で歯数が増加することが報告され、1つの遺伝子により歯数を増やすことのできる可能性が示唆されてきた。我々は、新規BMP拮抗分子USAG-1欠損マウスにおいて、歯数が増加するphenotypeを見出した。そこで、本研究は、USAG-1欠損マウスを用いて、歯牙形成過程において、特に歯数の制御に着目し、歯数を制御するメカニズムを遺伝子レベルで明らかにすることを目指し解析を行った。歯数増加は上顎切歯において解析したUSAG-1欠損マウス25例中全例で認められたため、以下の解析は、上顎切歯部において行った。胎生13週から生後3日まで、同部位をHE標本を用いて、組織学的評価を行った。野生型では、痕跡的な乳切歯が胎生15週まで発生が進むが、以後縮小、消失して行くのに対し、USAG-1欠損マウスでは、胎生15週以降も発生が進み、一部エナメル質形成を伴った歯牙の形成を認めた。胎生15週でTUNEL法にてApoptosisを比較したところ歯間葉細胞おいて多く認められ、過剰歯は、同部でUSAG-1欠損によりBMPの機能が亢進されたため歯間葉細胞のApoptosisが抑制されたためと考えられた。なおヒトにおいても痕跡的な第3歯堤の存在が報告されており、本研究は歯数制御の分子機構の一端を明らかにするとともに、USAG-1を標的分子として歯牙再生を目指す新しいアプローチの可能性が示唆された。
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