研究概要 |
われわれが作成し臨床応用を行ってきた培養複合口腔粘膜は、その作成過程において、従来の人工粘膜作成に使われていたfeeder layerや動物血清といった他動物由来物質を全く使用しないものの、患者自身の口腔内より採取・培養した上皮細胞の支持体としてヒト真皮無細胞マトリックス(Allo Derm^<(R)>)を使用し、この他個体由来物質を使用することが唯一問題であった。本研究では、培養複合口腔粘膜作成過程において、他動物・個体由来の物質を完全に排除するため、Allo Derm^<(R)>に替わる生体材料の開発・改良が目的である。平成17年度は、その一端として、粘膜という上皮組織には基底膜再生は必須であるという観点に立ち、従来より作製してきた培養複合口腔粘膜において基底膜再生機転について研究を行った。併せて、培養複合口腔粘膜として移植される細胞の、移植後の細胞動態についても検討した。今年度の研究において、われわれの作製する培養複合口腔粘膜は、完成時に基底膜を有しており、その主要成分としてCollagen, Laminin等を保持していることが明らかとなった。また、この基底膜構成成分は経時的に変化し、それに伴い基底膜立体構造が変化していることも明らかとなった。さらにわれわれの作成した培養複合口腔粘膜移植後の創傷治癒過程においては、Laminin-5の発現が明らかであり、通常の創傷治癒と極めて類似したものであることが確認された。移植された上皮細胞は、移植後の脂肪酸代謝や上皮組織防御機能の評価から、正常細胞と同等の細胞機能を獲得していることが明らかとなった。これらの結果から、開発する生体材料に必要な条件は、1,移植上皮細胞が生着し、さらに正常な代謝活動を行える材質および微小環境を有する、2,移植上皮細胞もしくはdermis構成細胞が、基底膜構造を作り得る環境および材質である、の2条件であると考えられた。
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