研究概要 |
当科においてTS-1(80mg/m^2)を用いた化学療法を施行した25例の口腔扁平上皮患者の治療効果はCR7例、PR5例、NC13例であり、PRとNC例(n=18)について、治療前後のホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて免疫組織染色にてp27^<Kip1>の発現を検索したところ、PR5例中3例(60%)とNC13例中2例(15.3%)において治療前に比較して治療後に軽度ながらその発現が増強していた。さらにPR例では、細胞の核に局在してその発現がみられたが、NC例では核ならびに細胞質にその発現が見られる傾向にあった。次に口腔扁平上皮癌細胞B88細胞をヌードマウス背部皮下に移植した後、TS-1(10mg/kg/日、週5日)の8週間連日経口投与を行ったところ、0.5%HPMC投与群(コントロール群)と比較して、2週目以降有意な(P<0.01)抗腫瘍効果が認められた。また、この際免疫組織染色法にて経時的にP27^<Kip1>発現の軽度増強が見られた。さらに、ホルマリン固定パラフィン包埋標本から抽出したRNAを逆転写しcDNAを合成後TaqMan PCR法により定量解析する手法(Danenberg Tumor Profile)にて、p27^<Kip1>mRNA発現を検索したところ、0W(TS-1投与開始時);5.58、1W;7.72、2W;7.38、4W;7.72、6W;7.66、8W;14.30(p27^<Kip1>mRNA/β-actin mRNA)と遺伝子発現は経時的に増強された。同様にヌードマウス背部皮下B88腫瘍に対して、プロテアソーム阻害剤(Proteasome Inhibitor I, CALBIOCHEM;10mg/kg/日、週2日)とTS-1(10mg/kg/日、週5日)をそれぞれ単独および併用投与を3週間行ったところ、併用にて有意な(P<0.01)抗腫瘍効果が見られ、この際、免疫組織染色法にてp27^<Kip1>の顕著な発現の増強が見られた。以上より、TS-1はp27^<Kip1>発現の増強をきたし、プロテアソーム阻害剤との併用にてさらに顕著にその発現を増強し、著明な抗腫瘍効果発現につながる可能性が示唆された。
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