研究概要 |
口腔扁平上皮癌の生検・手術材料におけるJab1蛋白は,転移例(P=0.0004),進展例(P=0.0011),非奏効例(P=0.0133),経過不良好例(P=0.0095)において高発現を示し,またJab1低発現例の5年生存率は80.6%であり,Jab1高発現例の53.0%に比して有意(P=0.0053)に高い生存を示した。以上よりJab1は口腔扁平上皮癌の転移,病期,治療経過と緊密に関連しており,臨床上有用な予後因子となりうる可能性が示唆された。またプロテアソーム阻害剤1(PSI1)を用いてp27^<Kipl>発現の安定化を図り,抗腫瘍効果への影響を検討するとともに,PSI1の抗癌剤増強効果を検討した結果,口腔扁平上皮癌細胞はPSI1 10ng-100μg/ml処理により有意に細胞増殖が抑制され,この際Caspase-3,8,9の活性化を介したアポトーシスの増強と,Beclin-1, Microtuble associated protein 1 light chain 3 (LC3)の発現誘導を伴うオートファジーが惹起され,さらにSKp2の発現減弱とp27^<Kipl>蛋白の分解抑制が認められた。PSI1の抗癌剤増強効果は5-FU,CDDPにおいて著明であった。またヌードマウスモデルにてPSI1 0.1-1mg/kg/day投与により有意な抗腫瘍効果が見られ,残存腫瘍においてSKp2の発現減弱とp27^<Kipl>蛋白の分解抑制が見られた。また抗癌剤増強効果は5-FU,TS-1,CDDPにおいて著明であった。以上よりPSI1はp27^<Kipl>蛋白分解を抑制してその発現を安定化させることにより抗腫瘍効果を発現する可能性が示唆され,他の抗癌剤との併用によりp27^<Kipl>蛋白発現の安定化を目指した分子標的療法の開発が可能と考えられた。
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