研究概要 |
顎顔面領域の外傷、悪性腫瘍や先天奇形のために、顎顔面領域に広範な欠損を生じた患者に対して機能と共に形態を回復することは、患者自身の社会復帰にとって極めて重要である。移植外科や再生医療の発達はめざましいものの、目、耳、鼻、頬部などの顔面組織形態を回復するためには、現状ではエピテーゼが最も優れている。また成長期の患者では成長に合わせて作り代えることも可能である。 わが国における顔面補綴治療は、歴史的に口腔外科や補綴科において行われてきており、1980年代以後は厚生省から高度先進医療として承認されている。また、チタン製インプラントがエピテーゼの維持に極めて有効であることから、当科ではエピテックシステムを使用して、エピテーゼの維持源としている。しかし、エピテーゼの作製方法は、30年前からほとんど進歩していないのが現状である。 眼球欠損を伴う顔面欠損患者のエピテーゼ製作において、最も時間を要する工程は,ワックスによる顔貌の造形と顔色に合わせたシリコーンの着色である。目を閉じた状態で印象採得した顔面模型で、眼球の位置を3次元的に再現することは容易ではない。本研究においては、コンピュータ上で術前の患者の顔貌写真を予測し,石膏顔面模型に等倍になるように投影して,ワックスによる顔貌の造形を行うシステムを開発した。このシステムにより完成度の高いワックス造型が可能となり、経験の少ない術者でも,ワックスによる顔貌の造形を容易に行うことができるようになった。 本システムは佐賀大学知的財産管理室を通じて特許出願を行った(特願2005-344494)。
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