16年度、17年度においては、嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査と嚥下音の同期を可能にし、健常者での嚥下音サンプルを採取し嚥下音分析を行った。採取した嚥下音信号はウェーブレット変換による時間-周波数分析を行った。その結果、嚥下音には複雑な成分が含まれるが、通常3つの主な成分から構成されることが確認できた。(石飛)これらの成分は嚥下時の筋収縮や喉頭蓋の動、食塊通過等に関連しているものと考えられ、そのメカニズムに関して筋電図や嚥下圧測定を含めての検討を行った。(鮎瀬)((嚥下音に含まれる成分のメカニズム解析)) 嚥下内視鏡検査との同期に関しては、咽頭残留の状況と嚥下音との関係を解明するうえで非常に有効であり、さらには嚥下造影の同時分析により嚥下動作と嚥下音の詳細な関係を分析することが可能となった。しかしながら、嚥下音による誤嚥の診査に関しては、嚥下時に生じる気管内の通過音を採取することが困難であり、嚥下音単独での誤嚥診査は困難であることが判明した。 そこで、誤嚥時の湿性呼気音に対する周波数分析や声帯振動の変化を分析することにより、微量な喉頭内侵入や誤嚥の有無を判定する方法を検討した。特に発声時の声帯振動に関する変化に着目し、sound spectrogramにおけるフォルマントの分析や基本周波数の分析を行うことで、声門上の軽微な変化を検出することを試みた。その結果、誤嚥および喉頭内侵入に伴い、フォルマント波形に一定の変化が生じることが明らかとなり、今後の誤嚥判定に有効であることが示唆された。(石飛、鮎瀬)本研究をもとに、今後は誤嚥に特有な波形の識別と、誤嚥診断装置の開発に取り組む予定である。
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