研究概要 |
申請者らは過去の研究で顎関節症患者の関節滑液にはIL-1βの増加とその抑制系であるIL-1 receptor antagonist(IL-1ra)の減少が見られることを報告した.このため,この炎症変化を制御するにはIL-1βを減少させることと,IL-1raを増加させるという戦略が考えられる.そこで今回,超音波による遺伝子導入法を用い,IL-ra遺伝子を滑膜細胞に導入し,抗炎症効果が発現するかを検討した. 方法:IL-1ra cDNAを超音波遺伝子導入装置(Sonitron2000TM)を用い,ウサギ膝関節由来の滑膜細胞(HIG-82)に遺伝子導入した.超音波照射に際しては超音波造影剤であるマイクロバブル(Sono VueTM)を併用し,遺伝子の導入効率を向上させた.IL-1raの発現はRT-PCRと免疫染色にて確認した.HIG-82にIL-1ra遺伝子を導入後,LPSで刺激し,IL-1β,IL-1raとPGE_2の産生をELISAで検討した. 結果:IL-1raの遺伝子導入によりIL-1raのmRNAとその陽性細胞が確認された.IL-1ra導入群へのLPS刺激ではコントロール群と比較して,II-1βの発現とPGE_2の産生が抑制されていた. 結論:in vitroにおける滑膜細胞へのIL-1raの遺伝子導入による抗炎症効果が確認され,顎関節の炎症性変化に対する遺伝子治療の可能性が示唆された.
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