研究概要 |
目的:非特異的感染防御機構(自然免疫)に関与する抗菌ペプチドであるhCAP18を治療薬として用いることで、抗菌耐性菌や抗癌耐性細胞の克服を目指して、生体に優しい感染症及び癌治療の新しい治療展開を目的とした. 方法と結果:合成ペプチドの作成:合成ペプチドとしてhCAP18109-135(FRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFL RNLV)と2種類の置換体ペプチドLL/CAP18とFF/CAP18を作製した. 1.口腔細菌に対するhCAP18合成ペプチドの効果 成人型歯周病の原因菌とされるPoryphyromonas嘱に対するhCAP18の効果は.P. gingivalis, P. leviiとP. intermediaは生菌が確認できなかった.また,グラム陰性菌は一般にhCAP18に感受性であるが、菌株によっては抵抗性であった.次に,ベーチェット病患者由来のS. sanguisに対する殺菌効果もみられ,同菌の菌体成分であるLTA、または,グラム陰性菌の菌体成分LPSが主要なターゲット分子であることを明らかにした.LTAやLPSによるマウスの実験的ブドウ膜炎の系を用いて,hCAP18が実際のin vivoでも菌体成分を中和して,その発症を阻止することが示された. 2.口腔癌細胞に対するhCAP18ペプチドのアポトーシス誘導とその伝達経路の解明 ヒト口腔扁平上皮癌細胞を用いて、hCAP18合成ペプチドによる殺細胞効果を検討し、アポトーシスを誘導して抗腫瘍効果を示すことを明らかにした.さらにhCAP18によるアポトーシス誘導に至る伝達経路を解明するため、細胞画分を行いウエスタンブロット法でシグナル分子を検討した.その結果,Baxを介して,endonuclease Gがミトコンドリア,さらに核移行して,caspase活性を経ずして核の断片化を実行することを示した.
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