研究概要 |
目的:生体内に存在する自然免疫に関与する抗菌ペプチドを用いて,口腔感染症や口腔癌の治療薬として応用することを目的とした. 結果: 1.口腔癌細胞移植ヌードマウスによるhCAP18ペプチドのin vivoにおける治療効果 ヒト培養口腔扁平上皮癌細胞をヌードマウス背部皮下または舌への同所移植を行い,合成ペプチドを投与し,in vivoでの抗腫瘍効果を判定した.その結果,腹腔内,腫瘍局所に連日,又は隔日局所投与を行うことで,腫瘍増殖抑制効果が認められたが,静脈内投与では無効であった. 2.口腔癌および正常上皮細胞へのhCAP18/CAMP遣伝子導入による細胞形質の変化 ヒト培養口腔扁平上皮癌細胞SAS-H1および正常ヒト上皮細胞HaCaTを用いて,CAMP遺伝子を導入し高発現安定細胞を作製し,本細胞を用いて,細胞形質の変化を検討したところ,遺伝子導入による細胞増殖の変化はみられなかったが,CAMP遺伝子を導入し構成的に蛋白質発現を有するSAS-H1細胞では,hCAP18ペプチドで誘導されるアポトーシスが抑制され,その結果,抗腫瘍効果が減弱した. 3. hCAP18/CAMP遣伝子導入細胞の感染抵抗性の検討 上記で得られたCAMP遺伝子導入細胞を用いて.本細胞が,nativeな活性ペプチドを産生分泌することを抗hCAP18抗体によるウエスタンブロットで,蛋白質発現と培養上清での確認を行った.そこで,菌体成分による細胞処理による生存細胞の変化を検討下結果,CAMP導入細胞では,菌体成分による殺細胞効果が抑制されていた. 4. hCAP18合成ペプチドによる樹状細胞誘導と癌免疫療法への応用 ヒト末梢血から単球を分離し,hCAP18合成ペプチドによる樹状細胞誘導の有無を,細胞表面抗原の解析と形態変化を指標に検討した結果,CAMP遺伝子導入癌細胞が産生するhCAP18ペプチより,樹状細胞の分化誘導が促進された.
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