ユージノール(EUG)は歯科領域において酸化亜鉛ユージノールセメントとして用いられており、その異性体であるイソユージノール(IsoEUG)とともに光酸化により反応性の酸化物を産生する。我々は、マウス頬粘膜にEUGとIsoEUGを塗布し、可視光線を照射させて毒性効果を検討した。IsoEUG群における組織障害は、可視光線の照射にかかわらずEUG群に比較して顕著であり、両化合物の毒性効果は可視光線照射によってより増強された。HE染色とTUNEL法による病理組織学的検査では、生物学的には主にアポトーシスではなく、ネクローシスが引き起こされることが示唆された。 次に、我々は可視光線重合開始剤であるカンファキノン(CQ)と9フルオレノン(9F)を使用し、マウス頬粘膜で毒性効果を検討した。CQを塗布した頬粘膜上皮は急性炎症を示し、細胞性水腫により棘細胞層の著しい肥厚を示し、このことは同様に9Fでも認められた。CQと9Fを塗布し可視光線を照射した群では照射しない群に比較し、より著しい炎症が認められた。しかし、アポトーシスの誘導反応はCQ、9F塗布群とも可視光線の照射にかかわらず明らかでなかった。細胞実験に比べ組織レベルでの障害性が小さかったので、ビタミンE誘導体(α、β、δ、γ)のようなフェノール系抗酸化剤のラジカル消去活性がメタクリル酸メチルエステル重合系で検討された。アルキルラジカル、パーオキシラジカルの消去はこれらの誘導体によって消去された。可視光線照射による可視光線重合開始剤やEUG関連化合物の酸化ストレスは、生体において、ビタミンE誘導体、その他の抗酸化剤ビタミンC、グルタチオン等により抑制されたものと考えられた。 以上のことから抗酸化剤の適切な摂取はラジカルによる細胞障害性の予防になると考えられた。
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