研究概要 |
癌性疼痛の中でも、体性痛や内臓痛は、麻薬を中心とした鎮痛剤によく反応するが、神経因性疼痛は抵抗性を示す場合が多く、この治療法の確立が課題となっている。口腔癌においても、三叉神経浸潤により、モルヒネを中心とした疼痛治療に抵抗を示し、麻薬増量に伴う意識活動の制限などQOL低下をきたす患者も多い。近年、がん浸潤に伴う神経因性疼痛に中枢性感作が関与していること明らかになった。この神経因性疼痛に、COX-2,COX-3が関与している可能性が示唆されている。そこで、本研究では、口腔癌性疼痛における三叉神経の中枢性感作にCOX-2,COX-3が関与しているかを明らかとすることを目的とした。本年度は、口腔癌が進行し、がん性疼痛が増強してゆく過程で、中枢神経におけるopioid receptorやCOX-2、COX-3発現の経時的変化をマウス顎骨浸潤モデルを用いて実験を行った。Hマウスの咬筋部に、マウス口底部扁平上皮癌由来細胞株SCCV2を移植し、下顎骨浸潤癌を発生させる。このモデルは、移植後4週で腫瘍の顎骨浸潤が生じる。そのため移植後、1週間後、7日後、14日後、21日後、28日後、35日後の各群と移植を行わないcontrol群(それぞれ5匹ずつ)の脳幹部を取り出し連続薄切片を作成し、疼痛時に発現する脳内のimmediate early geneであるc-fosについても同様に免疫組織染色を行った。さらに、COX-2、COX-3発現とc-fosの発現の相関関係は、それぞれ統計学的検定を行い経時的に比較検討することで疼痛との関連を解析した。実験の過程において脳幹部の取り出しに一部問題があり、現在、再実験中である。結果が出次第、発表の予定である。尚、関連事項として併せて実験中である口腔外科手術におけるCOX-2 inhibitorの術前投与が、痛みの中枢性感作を抑制する可能性について明らかとし、研究成果として記載した。また唾液腺腫瘍におけるCOX-2発現がHGF発現と相関し、腫瘍の分化に関与している可能性についても明らかとしたため研究成果として記載した。
|