研究概要 |
癌性疼痛の中でも、体性痛や内臓痛は、麻薬を中心とした鎮痛剤によく反応するが、神経因性疼痛は抵抗性を示す場合が多く、この治療法の確立が課題となっている。近年、この神経因性疼痛に、COX-2,COX-3が関与している可能性が示唆されている。そこで、本年度は、まず、口腔外科領域(三叉神経領域領域)慢性疼痛の制御の可能性について、検討を行った。(1)痛みの中枢性感作にCOX-2が関与していること報告され(Samad TA, et. al.Nature 410,471-5,2001.)、COX-2 inhibitorが先制鎮痛効果を示す可能性が示唆されている。口腔小手術患者を対象に、COX-2 inhibitor meloxicamの先制鎮痛効果の検討を行った。Meloxicamを術前投与行った場合、non-selective NSAIDsを投与した群、placebo群と比較し有意に先制鎮痛効果があること明らかにした。(2)痛みの侵害入力に、2次ニューロンの鋭敏度が変化し興奮性アミノ酸が分泌されるため、興奮性アミノ酸のantagonists(Dextromethorphan 30mg術前投与)を用いることで先制鎮痛が得られるかを明らかにし論文として発表した。(3)前年度に引き続き、口腔癌が進行し、がん性疼痛が増強してゆく過程で、中枢神経におけるCOX-2、COX-3発現の経時的変化をマウス顎骨浸潤モデルを用いて実験を行った。SCCV2株を移植後、1週間後、7日後、14日後、21日後、28日後、35日後の各群と移植を行わないcontrol群(それぞれ5匹ずつ)の脳幹部を取り出し連続薄切片を作成し、疼痛時に発現する脳内のimmediate early geneであるc-fosについて免疫組織染色を行った。さらに、COX-2、COX-3発現とc-fosの発現の相関関係は、それぞれ統計学的検定を行い経時的に比較検討した結果、脳幹部に明らかなCOX-2、COX-3発現が認められなかった。
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