研究概要 |
1)口腔癌培養細胞株として,HSC-2,HSC-3,SCC25,KBの4種類の細胞を対象として,ケモカインおよびケモカインレセプターであるCXCL12/CXCR4,リンパ管の新生に関連の深いVEGF-Cの発現について検索した.細胞表面に発現しているCXCR4を定量的に評価するために,すでにフローサイトメトリーでその発現強度の差が報告されている乳癌細胞MBA-MD-231およびその肺転移株などを陽性コントロールとして,RT-PCR法で確認したところ,HSC-3,KBは高発現,SCC25は低発現,HSC-2は発現していなかった.CXCR4のリガンドであるCXCL12の発現を確認できず,検討した4種類の細胞においてはケモカインとケモカインレセプターの共発現によるオートクライン機序での癌の悪性度の増強は認められなかった. 2)上記の口腔癌培養細胞株4種類をヌードマウスのリンパ節転移モデルに応用した.同所性(口底・オトガイ下)移植および足蹠皮下移植を実施したが,SCC25はヌードマウスへの移植性が低く,SCIDマウスへの移植も試みている.他の3種類については移植性が良好であるが,HSC-3を除いて現在のところ所属リンパ節への転移を確認できず,同所性移植として咬筋部の追加やマトリジェルとの同時注入などを検討中である. 3)口腔扁平上皮癌患者から得た臨床材料を用いて,ケモカインとケモカインレセプターの発現およびリンパ管新生に関連する因子であるVEGF-C, VEGFR-3およびリンパ管内皮の特異的マーカーD2-40の発現について免疫組織学的染色を行った.VEGF-Cの発現頻度が高く,VEGFR-3の発現については,リンパ節転移,予後との関連について検索中である.当初研究対象と考えていた材料が諸事情により一部使用困難な状況にあり,目標サンプル数を減じざるを得ない.
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