本研究は、嚥下時や構音時など舌機能の発達過程に変異のみられる小児に対し、治療の動機付けを確かなものにし行動変容を促すために、三次元ワイヤーフレーム表示された自らの顔と歯列のなかで舌を運動させる方法を開発することを目的としている。前年度更新した非接触型三次元形状測定装置模型計測部(テクノアーツ、グラスプM)および顔面計測部(グラスプF)を用いて、研究協力者1名をモデルとして、上下別々に入力された歯列模型と顔面構造を、側貌頭部エックス線規格写真のスキャナー画像から得られる側貌の輪郭および歯列弓形状を介在させて上下歯列弓と顔面の三次元構造として一体化して表現した。 歯列と顔面の三次元構造のなかで行わせる舌運動については、超音波画像では舌前方部の構造が十分捉えられないため、まず、シリコーン印象剤を用いて安静時および嚥下時の舌背と上顎歯列弓内面を印象採得して舌背模型を製作し、これらをグラスプMから入力して、先に述べた三次元構造にはめ込み、舌運動の起始点と終了点とした。超音波診断装置からは、舌背中央矢状断および第一大臼歯近心部前頭断の時系列画像をそれぞれ製作しこれらを組み合わせて、アニメーション化する三次元舌運動の基本情報とした。なだらかなアニメーション画像を得るには3月末現在いたっておらず、次年度への検討課題として残った。 第5回アジア小児歯科学会議および第23回日本障害者歯科学会では、口唇口蓋裂患児の初診時から口唇形成術直前までの歯列模型をグラスプMにより分析し、Nasoalveolar Molding Plateによる早期治療の効果について発表した。
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