研究概要 |
骨格性下顎骨偏位症の全身機能を検討するための方法を確立するために、正常咬合者により下顎運動、頭部運動、体幹動揺を以下の方法で計測した。 測定装置・測定条件 被検者は顎口腔系に自覚的,他覚的に異常を認めない健常ボランティア3名(25〜28歳,男性)とした.下顎運動と頭部運動の記録には,6自由度顎運動測定装置TRIMET II^<1)>(東京歯材社製)を使用し,体幹運動の記録には,Pro Reflex三次元モーションキャプチャーシステム(Qualisys社製)を用いた^<1)>.体幹運動の測定点として胸骨上の上下的中間点に直径5mmのマーカーを皮膚上に貼付した.呼吸の記録にはサーミスタ呼吸ピックアップ(NIHON KOHDEN)を鼻口部に絆創膏で固定し,外気との温度の変化を測定した.下顎運動と胸骨点の運動は,スタート信号を同時に送るトリガーにより,またそれらと呼吸センサーは同時にスタートボタンを手指で押すことにより同時記録を行った. 測定・分析法 姿勢は立位,座位の2種類として,測定開始時にFH平面を水平に保つように指示した.被験運動は開眼状態でタッピング40秒負荷し,測定開始直後の過度な重心動揺の影響を排除するため,測定開始から10秒後からを分析の対象とした. 結果と考察 立位,座位共にタッピング運動時,上顎切歯点はこれまでの報告と同様に,下顎切歯点と同期した動きを示した.胸骨点は下顎切歯点の動きと同期して,開口時には前方へ,閉口時には後方へ周期的な運動を示した.また,胸骨点は呼吸に同期して1分間に15回〜20回,前後方向に3.2mm〜10.7mmの周期的な運動を示していた. 以上のことより,タッピング運動時胸骨点の動きには,これまでの報告と同様にタッピング運動に同期した動きがあらわれた.また胸骨点の運動記録には呼吸による影響が含まれたことがあきらかとなった.
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