研究概要 |
昨年確立した下顎運動、頭部運動、体幹動揺の解析方法を用いて、骨格性偏位症例の立位と座位においる下顎運動に随伴する体幹動揺について検討した. 被検者は顎口腔系に自覚的,他覚的に異常を認めない下顎骨偏位症例5名(25〜29歳,男性)とした.下顎運動と頭部運動の記録には,6自由度顎運動測定装置を使用し,体幹動揺の記録には三次元モーションキャプチャーシステムを用いた. 測定・分析法:姿勢は立位,座位の2種類として,測定開始時にCamper平面を水平に保ち,10秒間の咬頭嵌合位保持の後,20秒間のタッピング,その後10秒間咬頭嵌合位保持を1測定クールとして測定を行った. 下顎運動は上顎座標系にて下顎切歯点を,頭部は上顎切歯点,下顎頭点,頭頂点,後頭点を大地座標系で,また体幹動揺は大地座標系で胸骨点の矢状面内運動を分析した. 結果と考察:立位,座位共にタッピング運動時,上顎切歯点はこれまでの報告と同様に,下顎切歯点と同期した動きを示した.立位,座位共に胸骨点は,下顎切歯点の動きと同期して,開口時には前方へ,閉口時には後方へ周期的な運動を示した.また立位では,呼吸と同期している大きな周期の波形が認められたが,座位にはそれは顕著でなかった. 下顎運動に随伴する頭部運動の出現率は,立位で80.2〜100%(正常者91.2〜100%),座位で85.2〜100%(正常者96.4〜100%)と両姿勢において正常群よりも低い値を示した。一方,下顎運動に随伴する体幹動揺の出現率は立位で34.5〜90.2%(正常者54.9〜97.3%),座位で50.6〜89.0%(68.7〜95%)を示し,頭部運動とは異なる出現様相が明らかにされ、ともに正常者よりも低い値を示した。 以上から、顔面形態の違いが、頭部運動、体幹動揺に関連していることが示された。
|